「リスク分布図」で資産形成と保険の卒業
以前お話した「ムダな保険の浮彫シート」で洗い出した項目を、費用の大小と発生の頻度の高低で仕分けすることで、①放置してもよいリスク、②予防が適しているリスク、③貯蓄や運用などが適しているリスク、④保険が絶大な効果を発するリスクの4つに分類することができます。
①放置 一家の大黒柱である「収入を家庭に持ち帰る者」の死亡は、その後の収入が入ってこない重大事です。しかしながら、収入のない者が元気で家でゴロゴロしているということは、「石(ごく)つぶし」(働きもせず消費する者)以外の何ものでもありません。
つまり、死亡保障は、現役でバリバリ働いている者には必要ですが、引退すると死亡リスクはなくなるということです。このように、現役引退後の死亡リスクは「放置」可能なリスクと言えます。
②予防 虫歯や風邪のように、発生の頻度はかなり高いのですが、治療費がさほど高額ではないものは、手洗い・うがいや歯磨き・歯間ブラシなどの「予防」がリスク対策に適していると言えます。
風邪の治療費の数千円を毎月積立てたり、保険で賄ったりすることが考えにくいということです。このように、発生の頻度は高いものの、その費用が少額のものは「予防」が適しているといえます。
③貯蓄・運用で保有 教育資金の準備や老後資金の準備など、「時間をかけて、発生の頻度も高く、定期的収入で補えるもの」は保険を活用するよりも、財産形成や資産活用で補えることが適したリスクと言えます。
老後資金にしても、教育資金にしても、必要な時期まで時間があり、その時期になると毎年必要となる資金という性格から、第六章のインカム・ゲインが最も適している金融であると言えます。
④保険に移転 損害賠償や住宅災害、家財の損失など、発生の可能性は低くても、いざ起こると大金が流出するようなリスクは保険の効果が最大限発揮できるものです。
また、就業不能状態が長期化すると、家計の収入を支えることが不可能なうえに、介護なども必要な可能性があるため、本来は死亡保障よりも優先的に保険で準備すべきリスクなのですが、世界に類を見ない高齢社会の日本では保険会社においてその開発が遅れ、当然、長期就業不能保障というリスクの認識すら乏しい状況にあります。
金融の「役割分担」
金融には二勝一敗の法則があることを以前お話しました。
保険の特徴は「即効性があり、大金の準備ができる」ことが長所ですが、「使い道が制限されている」ことが短所でした。
リスクとは「不確定なことについて確率的に計測できるもの」なのですから、死亡と生存は表裏一体であるため、長生きに備えながら万が一に備えることが最も効率的であるといえます。
つまり、まずは老後に向けて「定期的収入の確保を計りながら、万が一に備える」ことが前提であり、「不労所得の増大に伴って、死亡保障など保険の削減や卒業が期待できる」ことが金融の役割分担というコーディネートを行うメリットと言えます。
リスク分布図を作ることで、時間の経過とともに様々な保険を卒業できる。