「分配金」の種類
分配型投資信託には、その分配金は普通分配金と特別分配金の2種類があります。
常に購入と売却が自由にできる追加型の投資信託では、支払われた分配金の種類によって購入時期の違う投資家ごとの個別元本を常時計算します。個別元本とは、お客さまが保有されているファンドの取得時の平均投資元本で、解約・償還時の税額計算の基礎となります。
同一ファンドを同一預り区分で複数回購入した場合は、そのつど個別元本の計算が行われます。
また元本払戻金(特別分配金)を受け取った場合にも調整されます。
これは、毎日変動する野菜の平均仕入価格を計算するようなものですが、その平均価格を上回る部分を普通分配金、その平均価格を下回る場合を特別分配金といいます。
普通分配金は、分配金が支払われた際、分配落ち(=分配金の原資となる運用収益などは一旦純資産総額の中に含まれ、分配金の支払いがあればその分だけ純資産総額は目減りし基準価額も下落することで、分配したら価格が落ちるという意味です)後の基準価額が個別元本と同額または上回る場合をいい、全額が所得税、住民税の対象となります。
特別分配金(元本払戻金)とは、分配金が支払われた際、分配落ち後の基準価額が個別元本を下回る部分に相当する金額をいい、個別元本は利益ではないため、その分配金も非課税となります。
簡単にまとめると、追加型の投資信託は、①いつでも売買ができるため、②利益を純資産総額(貯金箱)に貯めて、③決算ごとに投資家に分配するのですが、④分配後の純資産総額を全投資家の保有口数で割って、⑤それぞれの投資家ごとの時価を計算し、増加していれば課税の対象になる普通分配金、⑥減少していれば税金の対象にはならない特別分配金となります。
分配型は「タコ足配当という世間の常識」
タコが自分の足を食べる姿から、利益ではなく、ファンドの原資を分配することをもじった表現です。(実際には、タコはストレスが溜まって食べるので、空腹をしのぐものではありません)
多くの払い出し重視のファンドの評価として、「ファンドが十分な利益がないにもかかわらず、過分な配当金を出し、 見た目には配当金が高いため魅力的に感じられますが、実際は資産を売却したり、積立金を取り崩したりして配当金に回しているだけで、業績や財務状況に難点がある可能性があります」と書かれていることがありますが、「難点がある可能性」について検証してみましょう。
ツボ150 分配金の「良し悪し」
追加型投資信託の毎月決算型の場合で検証してみましょう。
本来、投資信託の分配金には、次に挙げる3つの配当財源があると私は考えています。
①その月の利益
②過去のファンドの利益で分配していない資産
③投資家が投入した資金
これらすべてが、一旦はそのファンドの純資産総額に組み込まれ、投資家の保有口数に応じて分配されます。それぞれの投資家は購入時期が違うため、前述の個別元本は当然異なります。
その個別元本を上回る部分が普通分配、下回ると特別分配としているのは、あくまで、課税を中心にした考え方ですから、分配金の健全性を問うものではありません。
少し乱暴ですが、ファンドを会社、分配金を給与に置き換えて考えてみましょう。
会社にも総資産として
①その月の利益
②前月までの利益の積み上げ
③銀行などからの資金調達による資金が存在します。
今月の給与の支払いが不足していれば、経営者は過去の利益の積み上げから支払い、それでも給与の支払いに困れば、当座をしのぐために資金調達してでも払いうでしょう。
一方、課税については、
①今月の利益に関しては会社で税金がかかっていないので源泉聴取します。
②過去(昨年度の利益)については、会社として法人税を納めているので課税済みのため非課税。
③調達した資金は利益ではないので非課税と考えれば、
3つの配当財源を確認すれば、そのファンドの分配金が健全かどうかを探ることができます。
運用報告書から見る「配当の健全性」
実は、小難しいことを考えなくても、各運用会社の運用報告書を確認すれば、その健全性は確認ができます。(上図:分配原資の内訳参照)
分配原資の内訳を確認すれば、支払われた分配金が、
①その月の利益なのか
②過去の利益の分配金なのか
③翌期以降に分配できる財源は残しているのか
3点を読み取ることができます。
図のファンドでは、44期まで1万口当たり100円の配当を分配していたのですが、翌期以降の分配金対象額を温存するために配当金を65円に下げ、財務強化を図っていることが覗えます。
そのまま100円出していたとしても、4100÷35=約117か月となり、10年近く配当を配れる体力はあったのですが、健全性を優先させています。
税金は1年、「運用は複数年」
世の中、販売という ㋑入口中心の社会ですから、投資家であるお客様が財産や資産を ㋺長期保有して、最終的に出金して使う ㋩出口のことまでサポートしないことから、残念ながら、あまり運用報告書は読まれていないようです。
余談ですが、分配型のファンドをタコ足配当と呼ぶのなら、国民年金や厚生年金は賦課方式という聞こえの良いタコ足配当制度です。
世の大企業が1年や2年赤字があったとしても即倒産しないのは「資産運用・資金調達」という長期の貸借対照表の管理(=財務)と税金の計算にも使われる「収入と支出」という損益計算所の管理(=業務)を健全に保っているからであり、短期間の業績不振だけでタコ足配当と呼ぶのは、損益しか見ていない証です。
逆に、そのような考え方だと黒字倒産の説明もできないのではないでしょうか?
資産運用の㋑㋺㋩を身に付けることで、インカム・ゲインという不労所得は皆さまの収入向上の強い味方になります。
運用報告書に配当の健全性が書かれている。
損益計算書だけでなく、貸借対対照表がマスターできれば、
ちょうどいいお金持ちの特徴であるインカム・ゲインが手に入る。