保険をはじめ、「金融のコーディネート」を邪魔するもの
リスクにムダ・ムラ・ムリなく対応するための第一ステップは「リスクの発見」です。
ムダな保険の浮彫シートとリスク分布図を2005年の名古屋で開催された日本FP協会主催のFPフェアで発表したのですが、講義を受けられた方々から、「こんなことを教えたら保険が売れなくなる」と口々に非難されました。
正しいことを世に広めるのではなく、自分たちの成績の心配をする姿に落胆し、翌年その協会を脱会いたしました。
誠に残念ですが、日本では「製造や販売」という仕事は社会的認知を得ていますが、「教育・相談」という仕事はまだまだその地位を確立していませんから、無理もないのかもしれません。
リスクの発見シート=「ムダな保険の浮彫シート」
私たちが生活をするうえで測定できるリスクには大きく3つの種類が存在します。
①収入の保障 私たちは主に「月々の収入」をもとに生活を成り立たせています。
その収入が不測の事態を迎え途絶えるかもしれないので、あらかじめ備えておく必要があります。
もちろん、リスクの発見が目的であって、保険で準備するということではありませんので繰り返しになりますがよく理解しておいてください。
具体的には定年や失業などの生存時に収入が途絶える、収入を得ている者が死亡を原因にその収入が途絶える、また、その者が病気やケガを起因として収入が途絶える就業不能のケースが存在します。
収入を支える者の死亡の場合、必要な収入の計算は遺族の生活費などで済むのですが、就業不能の場合は、病気やケガで働けない家族の介護も含め多大な出費がかかることを保険会社は軽視していることは否めません。
そのため、就業不能の保険の開発が欧米に比べ大幅に遅れているのが実情です。
介護保険の開発も進んでいるようですが、要介護状態2(LTD2)以上での支払いが条件であるなど、働けない状態であるにも関わらず、支払い要件に満たないことが、商品開発の遅れを露呈しています。
過去に各保険会社に打診したところ、「データがないため支払条件を厳しめにしています」という回答に愕然としました。
②損失の補填 生活を支える耐久消費財の中でも住宅や車両は特にその損失により財産や資産に大きな影響を与えることがあります。
また、身体をモノと同様に考えた場合、その修理に多大な費用が掛かることもあります。
このように、人や物が壊れて、その買い替えや修復に備えるというものです。
よくある、医療保険で「休業を補うために入院日額をたくさんかけています」という状況ですが、医療保険は「治療を目的とした保険」であって、もし、病気やケガによる休業時の収入をカバーしたいのであれば、短期・長期就業不能補償保険が妥当なのですが、取り扱いをしていないセールスマンは、そんな保険はないと話を終えるそうです。
また、ガンに限定した支払要件や、女性疾病に特定した支払要件など、さも支払われるようなネーミングで商品開発が行われているのですが、ガンだろうと、女性疾病だろうと、治療するに等しい給付金の支払いを行えば済むことなのですが、社会保険の補完を意味する個人保険が社会保険とリンクしてない点にも課題はあると思われます。(一部、社会保険の不足を補う商品は販売されています)
③損害の賠償 他人に対して、他人の物に対して、更には、自分(自社)が生産したモノやサービスによって相手に損害を与えるケースがあります。
自動車保険も分解すると、車両・搭乗者・対人・対物など、それぞれのリスクに対応する組み合わせで商品が作られていることがわかります。
ところが、搭乗者傷害保険など、生命保険と損害保険の垣根の問題で、上限1000万円という過去の風習が残っており、時代に適合した制度の見直しの必要性を感じます。
これは、人の保険は生命保険会社、物の保険は損害保険会社という分業の時代の産物をいまだに引きずっているため、人の身体はモノともいえるという第三分野という解釈で、根本解決をしない「先人に従え」の悪しき慣習であると思います。契約者のことを第一に考えた、未来に向けた改革ができることを願っています。
リスク発見シートでリスクの洗い出しを行う。
リスクのへの事前準備は保険とは限らないため、
洗い出しの段階では、どのように準備をするかを無視して作ることがコツ。